市場の冷媒漏れ検知のトレンド

2016年10月に採択され、2019年1月に発効したモントリオール議定書のキガリ改正では、2045年までにハイドロフルオロカーボン(HFC)の生産と消費を85%削減することを目標としています。この国際協定は、段階的削減措置を通じてHFCの気候への影響に対処するものです。HFCに代わる低GWP(地球温暖化係数)冷媒の多くは微燃性のため、特定の用途では漏れ検知を含む最新の安全対策が必要となります。UL 60335-2-40やIEC-60079-29-1などの規格ではこれらの対策が概説されており、米国では2025年から住宅および商業用空調システムの建築基準に組み込まれる予定です。

 

この記事では、HVACR業界で使用されている冷媒の種類、その採用動向、環境・安全規制への準拠をサポートする漏れ検知技術について説明します。

No alternate text provided

冷媒移行の背景

当初のモントリオール議定書では、オゾン層を破壊するクロロフルオロカーボン(CFC)とハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)を段階的廃絶が行われ、HFCの採用につながりました。HFCはオゾン層の懸念に対処しましたが、その高いGWPにより、キガリ改正を含む、よりGWPの低い代替冷媒への移行に向けた世界的な取り組みが推進されました。この移行には、多くの代替冷媒が可燃性を示すことから、様々な課題が伴います。

 

 

冷媒の分類

ASHRAE規格34では、冷媒を毒性と可燃性で分類し、文字(毒性の場合はAまたはB)と数字(可燃性の場合は1、2、2L、または3)を割り当てられています。CFC、HCFC、初期のHFC(例:ジクロロジフルオロメタン、A1)などの従来の冷媒は、低可燃性と低毒性を重視していました。一方、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、炭化水素(例:プロパン)、A2Lクラスの冷媒といった新しい低GWP冷媒は、多くの場合、可燃性が高い傾向にあります。最近導入されたA2Lサブクラスは、可燃性ではあるものの、燃焼速度が遅い冷媒を示しています。

No alternate text provided
出典: ASHRAE Refrigerant Safety Classifications

安全性と低GWP冷媒

A2L冷媒への移行は、その可燃性により安全性への配慮がこれまで以上に重要となります。UL 60335-2-40やIEC-60079-29-1などの規格では、HVACRシステムにおける漏れ検知を推奨することでこうしたリスクへの対応が図られています。規格自体は必須ではないものの、米国の州建築基準法では2025年までにこうしたシステムが義務化される予定であり、特にカリフォルニア州ではカリフォルニア州大気資源局(CARB)などの機関を通じて導入が加速しています。このタイムラインにより、メーカーには迅速な対応が求められています。

 

 

一般的な漏れ検知技術

冷媒漏れ検知には、光音響NDIR (PA)、非分散赤外線(NDIR)、熱伝導率(TC)、電気化学(EC)、金属酸化物(MOx)など、いくつかのセンサー技術が使用できます。

 

  • PAセンサーは、パルス状の赤外線(IR)光の吸収によって生じる圧力変化から音響波を測定することで冷媒ガスを検出します。高い感度と選択性を備えており、精度が求められ、他のガスに対する交差感度が低いことが重要な用途に特に適しています。
  • NDIRセンサーは赤外線吸収を利用して、高い選択性で冷媒ガスを検知しますが、コストが高く、アプリケーションの極端な温度と湿度の要件では性能に限界があります。
  • TCセンサーは熱伝導率の変化を測定することで検知を行い、応答時間が速く、長期安定性に優れているため、大量のA2L冷媒漏れアプリケーションに最適です。
  • ECセンサーは一部のガスに対しては有効ですが、A2L冷媒の検知要件を満たすために必要な寿命がないため、実用性が制限されます。
  • MOxセンサーは低コストで適応性も高いですが、時間の経過とともにドリフトする傾向があり、高濃度の冷媒に曝されると劣化して信頼性が低下する可能性があります。

 

使用する技術の採用は、コスト、耐久性、UL 60335-2-40などの規格準拠などの要素によって異なります。

 

 

センシリオンの冷媒検知技術の選定

センシリオンは、NDIR、TC、MOxなど、原理的に冷媒漏れ検知に適した複数のガスセンサー技術を提供しています。アプリケーションのニーズ、製造性、拡張性、UL 60335-2-40への準拠を評価した結果、センシリオンはA2L漏れ検知アプリケーションにTC技術を採用しました。この選定は、センシリオンのCMOSens® MEMSチップ製造プラットフォームに支えられたTCの安定性と拡張性を反映したものです。

 

 

冷媒検知の展望

規制の強化に伴い、HVACRシステムにおける可燃性の低GWP冷媒の普及は避けられない流れとなっています。安全規格が法令に統合されるにつれて、信頼性の高い検知ソリューションの需要が高まり、今後数年間の技術開発に影響を与えるでしょう。A2Lは低GWP冷媒への重要なステップであり、センシリオンは、プロパンなど他の重要な冷媒を信頼性の高い検知を可能にする取り組みを進めています。

Related sensors