ホルムアルデヒドは揮発性で、広く使用されており、そして多くの健康問題に関連があります。ホルムアルデヒドは重大な室内空気汚染物質ですが、ホルムアルデヒド濃度を正確かつ簡単に測定できるようにすることは、検出器の交差感度の問題があり困難であることが長い間証明されてきました。この記事では、ホルムアルデヒドに関わる危険性と、SFA30ホルムアルデヒドセンサーがホルムアルデヒド検出においてどのように新次元の選択性をもたらすかについて説明します。
ホルムアルデヒドの基本情報
ホルムアルデヒドは生物学クラスの保存料または防腐剤として知られており、実際に世界で最も重要な基本的な工業用化学物質の1つとされています。事実、世界中で毎年約1,800万トンのホルムアルデヒドが生産されていると推定されています。1
ホルムアルデヒドは非常に多用途で重要な化学的前駆体であり、数百万とは言わないまでも数千種の工業製品や消費者向け製品の製造に使用されています。ホルムアルデヒド用途で最も多いのは樹脂の製造で、その種類も数え切れないほどあります。
ホルムアルデヒド樹脂は主に繊維板、合板、家具の製造に使用されます。また、硬化性プラスチック、表面コーティング、放出制御窒素肥料の製造にも使用されるほか、繊維、皮革、ゴム、セメント産業の助剤として機能します。ホルムアルデヒドは、こうした用途で非常にユニークな有用性を持っているため、他の化合物との替えがきくことがほとんどありません。
危険な空気汚染
危険な大気汚染物質としてのホルムアルデヒドに対する懸念は、1960年代にプレハブ住宅の住民達が目や気道への刺激などの健康への悪影響を訴え始めたときに始まりました。2原因はホルムアルデヒド樹脂で結合された繊維板から放出されたホルムアルデヒドであることがすぐに判明しました。
ホルムアルデヒドは体内でも自然に発生するものですが、空気中のホルムアルデヒドにさらされると危険な場合があります。0.1ppmを超える濃度にさらされると、目や気道が刺激される可能性があり、慢性的にさらされると、喘息やガンなど、さまざまな健康状態に関連します。
アメリカ疾病予防管理センター (CDC) はホルムアルデヒドを全身性毒物として分類していますが、世界中の安全および労働衛生当局は、職業環境および非職業環境の両方におけるホルムアルデヒドの許容暴露レベルを定義しています。3,4
その問題の一部は、室温で気体であることです。つまり、樹脂に存在する少量の遊離ホルムアルデヒドが周囲の空気中に蒸発しやすく、有害な濃度に達する恐れがあります。ホルムアルデヒドは建材や消費者向け製品に遍在しているため、特に屋内で問題となり、木材ベースの素材、床材、断熱材、コーティングはとりわけ危険です。
ホルムアルデヒドの持つ危険な曝露リスクを軽減するための方法はいくつかあります。もちろん、最善のアプローチは、リスクが生じる前に発生源を排除することです。例えば、一部の組織では、建物内でホルムアルデヒド低放出材料の使用を奨励しています。5
もちろん、非常に多くの一般的な材料や製品にホルムアルデヒドが含まれている場合は、ホルムアルデヒド放出源を除去することは現実的ではないでしょう。発生源がすでに存在する場合、シンプルに換気するだけでも、ホルムアルデヒド (およびその他の大気汚染物質) のレベルを下げる非常に高い効果があります。換気には、工業環境に換気装置を設置するか、単に窓を開けることが含まれます。しかしながら、あらゆるガスの危険と同じく、真に安全を確保する唯一の方法は、空気中のホルムアルデヒド濃度を検出して定量化できる機器を使用することです。
ホルムアルデヒドのセンシング
世界保健機関 (WHO) は、感覚刺激やその他の健康問題を防ぐために、暴露限界を0.08 ppmに設定することを提案しています。6しかし、この範囲のホルムアルデヒド濃度を検出できるセンサーの開発は容易ではありませんでした。
ホルムアルデヒド検出器の主な課題の1つは選択性です。つまりホルムアルデヒドの検出を目的としたセンサーは、通常、屋内環境の一般条件ではるかに高い濃度で発生する他のVOCにも敏感に反応するのです。
ホルムアルデヒドを検出できる精度は、典型的な屋内環境では多種多様なVOCが少なからず存在するため、実験室で検出するように上手くいきません。ppm濃度で存在するこうしたVOCの多くは、ホルムアルデヒドセンサーのセンシングを妨げ、実際に空気中に存在するよりも高いレベルのホルムアルデヒドが記録される可能性があります。
長い間、目的の濃度のホルムアルデヒドの正確な測定を確実に達成できるのは分光装置だけでしたが、分光装置は通常、複雑で高価で、持ち運びが困難なので、ほとんどのモニタリング用途には適していません。
センシリオンのSFA30ホルムアルデヒドセンサー
SFA30は電気化学式ホルムアルデヒドセンサーであり、あらゆる環境で正確、迅速かつ簡単にホルムアルデヒド検出のニーズを満たすために特別に開発されました。7ホルムアルデヒドの選択性を有するために設計されたこのセンサーは、他のVOCとの交差感度が非常に低くなっています (エタノールの場合は <0.2% 未満)。
重要なのは、SFA30は他の揮発性有機化合物 (VOC) にさらされた場合でも他にはない高精度レベルを誇ります。VOCはほとんどの家庭や職場環境に遍在していますが、誤検知を無くせば、センサーの寿命も延びます。特に、SFA30はエタノールに対する交差感度が低く、他社製センサーでは不正確になります。
SFA30はあらゆる環境で動作するように開発されており、統合された湿度センサーと温度センサーが含まれており、特別に開発されたアルゴリズムがセンサーへの湿気と温度の影響を補正することができます。SFA30は、液体電解質の寿命を確保し、6年間の使用寿命にわたって安定性を保つための乾燥防止技術を備えています。インターフェースはデジタルUARTまたはI2Cから選択可能で、また、多様な取り付けオプションを用意し、SFA30は空気清浄機、エアコン、室内空気質モニターなどのデバイスに簡単に搭載できます。
センシリオンは環境センサー技術分野の業界リーダーです。SFA30もしくは当社のその他のセンサー (微粒子、VOC、CO2など)について更に知りたい方は、ぜひお問い合わせ下さい。
参考文献
1. Franz, A. W. et al. Formaldehyde. in Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry (ed. Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA) 1–34 (Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, 2016). doi:10.1002/14356007.a11_619.pub2.
2. Salthammer, T., Mentese, S. & Marutzky, R. Formaldehyde in the Indoor Environment | Chemical Reviews. https://pubs.acs.org/doi/10.1021/cr800399g.
3. Formaldehyde | Medical Management Guidelines | Toxic Substance Portal | ATSDR. https://wwwn.cdc.gov/TSP/MMG/MMGDetails.aspx?mmgid=216&toxid=39.
4. Formaldehyde - Overview | Occupational Safety and Health Administration. https://www.osha.gov/formaldehyde.
5. US EPA, O. ANSI/ASHRAE/USGBC/IES Standard 189.1-2014: Standard for the Design of High-Performance Green Buildings Except Low-Rise Residential Buildings (ASHRAE 189.1). https://www.epa.gov/smartgrowth/ansiashraeusgbcies-standard-1891-2014-standard-design-high-performance-green-buildings (2014).
6. Kaden, D. A., Mandin, C., Nielsen, G. D. & Wolkoff, P. Formaldehyde. WHO Guidelines for Indoor Air Quality: Selected Pollutants (World Health Organization, 2010).
7. SFA30 Formaldehyde Sensor Module | Sensirion. https://www.sensirion.com/en/environmental-sensors/formaldehyde-sensor-sfa30/.
